Nov - 3
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4070560802
nequest
“糸井 はじまりはね、んー、京都に行ったとき。
任天堂に仕事で行って、打ち合わせが終わって、
任天堂から京都に向かうタクシーの中。
宮本(茂)さんと岩田(聡)さんが
いっしょに乗ってたんだけど、宮本さんが、
「『MOTHER3』を
 ゲームボーイアドバンスでつくるのは、
 ありえますか?」
というふうに訊いてきたんです。
── 「つくってください」でも
「つくりませんか?」でもなく。
糸井 「ありですか?」と。
で、正直、ぼくにはよくわからなかった。
けれども、「ありですか? なしですか?」
と訊かれると、ありえるんじゃないか、と。
だから、いま思えば、すっごく正直な会話だよね。
ぼくも、この先がどれほどたいへんかとか、
具体的にどうすればいいのかとか、
そこまで考えていたわけじゃない。
でも、ありえるんじゃないかと思った。
で、タクシーを降りたときに、
自分のなかに「うれしい」っていう
気持ちがあることに気づいたんですよ。
‥‥うれしかったんですよ、やっぱり。”
“自分が直接手を出さない
プロデュースの仕事にしても、
あるいは、たんなるアシストにしても、
目の前にある仕事ぜんぶが、
かっこよくいえば、みんな本業なんです。
だから、その、
いいタイミングでうんこすることさえ
本業みたいなところがありますからね。”
“『3』をつくるぞっていうときに、
つまり12年前のことですけど、
ぼくがなにを考えたかというと、
これまでの『MOTHER』が好きなファンに
一回バーンと冷や水をぶっかけて、
そこからなかよくなりたかったっていう、
すっごい図々しいことを思ってたんです。
その余韻が開発を再開したときにも残っていて、
とにかく始末に困ったんですよね。”
“つくりかけていた『MOTHER3』は、
『MOTHER2』の開発が終わった
すぐあとに企画されたこともあって、
「いままでの『MOTHER』ファンを
 びっくりさせてやるぞ」
っていう部分がたくさんあったんですよね。
で、それは、すんなり発売されていれば
ファンを驚かせるものとして
機能したと思うんですけど、
中止で、あいだが空いたことによって、
たんに「『MOTHER』じゃないもの」
みたいなかたちで残ってしまっていて。”
“あんな機会は一生ないよ。
あんなふうにつくる仕事は、もうない。”
“メンバーとしては、まず、
進行を管理していたのが、
任天堂の呉服(和幸)さん。
必要なファイルを呼び出して、
「今日はここからここまでやります」って感じで
エクセルのセリフ集を
ずらーっと画面に並べる。
で、それを糸井さんが口頭で
ひとつひとつしゃべりながらつくっていく。
で、できたセリフを、戸田(昭吾)さん
(『MOTHER2』のシナリオの
 アシスタントを担当)がチェックしたり、
聞いてうなずいたり、笑ったりしながら、
全員でOKを出していく。
それを、呉服さんが書きとめて、
エクセルの新しいファイルをつくっていく。
糸井 そんなつくりかたってないよね(笑)。”
“まず、糸井さんの初期のシナリオと、
2年の打ち合わせのなかでできてきたことばが
ゲームのなかにすべて入っている。
それを、エクセルの表に
がーっと貼りつけている膨大なファイルがあって、
そのファイル上のことばをすべて
自分が過去につくったものもふくめて
糸井さんがぜんぶ書き換えていくという、
まあ、途方もない作業でした。”
“糸井 そうですよ。
ぼくは、やっぱり、
経験だけはけっこうありますから、
自分がいいと思ったことだけが
すべてじゃないんだっていうことは
知ってますから。
── それは、その、
単純に自信がないとか、
そういうこととも違いますよね。
糸井 自信はあります。
「あとからことばを入れれば大丈夫だ」って
そうとう自信は持ててます。
でも、自分ひとりがそういう自信や確信を
持ってるだけではだめなんだよ。
誰か信頼できるほかの人が、
ひとりでもそれを認めてくれて、
はじめて成立するんです。
つまり、どういうんでしょうね、
軸をふたつとらないと
中点ってとれないっていうか、
コンパスを2回使わないとだめなんですよ。
── あああ、なるほど。なるほど。
糸井 どういうものでもね、
ふたつで1点をさがしていくんですよ。
そのときに、自分だけの部分で
1点をさがした気になってる人が
「かんちがい」なんですよ。
── それはすごく大事なところですね。
糸井 大事なところです。
自分だけの、こ〜んなにでっかいコンパスを
1個持ってるだけではだめなんです。”
“『MOTHER2』の
「おとなも、こどもも、おねーさんも。」
なんて、ゲームの内容というより、
いまのゲーム業界を予見するような
ものだったじゃないですか。
糸井 うん。思えば、あれ、
ニンテンドーDSのコピーですね(笑)。”